哲学は問題解決能力に通ずる 書評49『はじめての哲学的思考』苫野一徳

書評

高校で倫理の授業は受けてたけど、何となく哲学って取っつきにくいイメージでした。
歴史から辿らないと本質が理解できない気がするし、そこまでの労力をかけて
勉強したくない!と思って敬遠していました。

一方で、「哲学とは何ぞや」が語れる教養が欲しいなあとも思っていました。
だから誰にとってもわかりやすい、ド入門の哲学講義書を探していたのですが、それが本書でした。

よくも取っつきにくい哲学の世界を、ここまで噛み砕いて説明してくれたなあと感激しました。


哲学とは、、、
・目の前にある問題を考え抜き、答え抜くこと
・出した答えに対して、誰もが納得できるような”共通了解”を見つけること


これが、著者の説く哲学の本質です。

宗教のように自身の信仰を貫き通すのではなく、自分が正しいと思うもの、
相手が正しいと思うものを突き合わせて、どこが言わば妥協点か、双方納得できる点なのかを
見つけることが、哲学の本質的な目的です。


だから、哲学には会議のファシリテーターに近い能力が求められるのだと思います。
異なる考えの人々に共通了解を持たせることは非常に骨の折れる仕事ですが、
現代においても是非学んでおくべき重要なスキルです。


しかしながら、著者は哲学的思考にチャレンジする際に注意すべき落とし穴があると説きます。
そしてその落とし穴を3つ、教えてくれています。

①一般化のワナに陥らない
 自身の過去の経験から、「これはこういうものだ」と
 決めつけるのは共通了解を阻む落とし穴になる。
②「問い方のマジック」に引っかからない
 どちらかが絶対に正しい答えであるかのような二者択一の問いを
 投げられると、誤った思考へ誘われる。
 どちらか絶対に正しいなんて物事は滅多にない。
  このような"ニセ問題"を、問うに値する問いに変えていくことが大切
③事実から当為は導けない
 「~があったから…すべきだ」のような決めつけは
 正しい理論にならない。当為を導くためには、もっと深い「欲望」
 の次元から考え合う必要がある。

会話のテクニックに惑わされて議論の本質を忘れてしまうことが
しばしばありますが、哲学は議論における本質を教えてくれます。

すなわち、「我々は一人ひとりが欲望を持っており、主張しても良い。
互いの主張を擦り合わせて双方合意に導くことが、哲学のプロセスであり
議論を成功に導く方法」
ということです。


考え方の軋轢が生まれるのは当たり前であって、それをうまく共通了解に
持っていくことが優れた哲学家の能力なのだと学びました。
そしてそれは、そっくりそのまま優れたビジネスマンの能力であるとも感じました。

先月辺りから、社内で他部門の方との打ち合わせする機会が増えているのですが、
私はファシリテートすることに目を向けて「Aですか、それともBですか、選んでください」と
二者択一の選択を迫ってしまっていたことが多いように思います。
もっと初心というか本質に戻って、「個々人が何をやりたいのか」にフォーカスしてから議論を進めた方が納得感が増すのではないかと考えを改めました。


仕事の進め方、自身の考え方の誤ちに気付かせてくれる本は稀有で貴重です。
私にとって、本書はまさにその役割を果たす一冊になりました。

哲学的思考が問題解決力を高めてくれるとは思いも寄りませんでした。
知らない分野にお宝情報が眠っているものです。こんな偶然の出会いが読書の魅力です。

良い本でした。みなさまも是非ご一読を。

4.0

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