浜口雄幸と安倍内閣を考える

日本の中小企業が苦しんでいる。
日本商工会議所の3月景気調査によると、中小企業の新型肺炎による経営への影響は、既に92.1%に達している(※懸念含む)らしい。
飲食店や娯楽施設では夜間の業務自粛が始まり、大手ゼネコンの業務自粛により下請け業者に仕事が無くなるといった影響が出始めている。

これを受けて政府は、新型肺炎の影響で売上が半分以上減少した中小企業に最大200万円、個人事業主に最大100万円を現金で支給する「持続化給付金」の制度を新たに設ける方針である。ゴールデンウィーク明けのできるだけ早い時期に給付開始を目指している。

止むを得ぬ事態に中小企業支援に舵を切った安倍内閣だが、一方で大企業の財務基盤を固めようと、日本政策投資銀行の「特定投資業務」を活用して1千億円程度を出資する案を検討していることが報道されている。
全体の投融資の規模は総額4千億円程度、経営に深刻な痛手を負っている航空業界や自動車業界を含む全産業が対象となる見通し。

これについて、多くの労働者から「大企業優遇」と批判の声が挙がっている。
中小企業には無利子とはいえ返さなければならない融資で、大企業には返済不能の出資を検討していることに”不平等だ”とする見方が大半になっている。

元来、安倍政権は大企業優遇で経済成長を目指す動きが目立つ。
「弱きを挫き強きを助く」この姿勢は、世界恐慌化で金解禁に踏み切った浜口雄幸内閣の姿と被って見える。歴史の整理とともに両内閣の似ている点を整理してみたい。

金本位制とは

金本位制とは、金を通過価値の基準とし、自国の通貨と金を一定比率で交換することを国が保証するという制度である。
1816年、産業革命によって飛躍的な成長を遂げたイギリスが世界で初めて金本位制を採用した。産業革命で国内の生産体制が一気に整い、大量生産した商品を世界中の国々に売りたがっていたのだが、同時に他国の通貨価値に不安を持っていた。
そこで、世界共通の価値を持つ金と通貨の交換を保証することによって、各国と安心して取引できると考え、金本位制を世界に普及させようとした。
他国も様々な商品を持つイギリスとの貿易は魅力的に感じ、次々に金本位制を導入するようになる。日本も1897年(日清戦争後)に金本位制を導入する。

第一次世界大戦により管理通過制度へ

上記の金本位制は、1914年までおよそ100年間続くが、第一次世界大戦を皮切りに停止となってしまう。
各国が戦争によって膨らんだ対外債務の支払いのために金を必要としたからである。
「金本位制=債務超過になると金が流出」するため、各国金本位制を中断し、通貨の発行量を
中央銀行が調整する「管理通過制度」に移行した。
金との繋がりが不要になったため、政府(=中央銀行)は手持ちの金に関わらず、紙幣を自由に発行できるようになる。このため、通貨量を増やすとインフレを起こしやすく、国際的な信用を失うという問題が出てくる。
一度世にばらまいた紙幣を減らすことは民衆(や特に軍部)からの批判が凄まじく、管理通過制度以降の内閣は中々インフレを喰い止めることができない。
これを喰い止めようと再び金本位制(金解禁)に戻そうとしたのが、浜口雄幸内閣と井上準之助蔵相である。

なぜ金解禁か

第一次世界大戦後(1920年以降)、ヨーロッパ諸国がアジア市場に復帰し、戦後恐慌が始まる。
生糸や綿花の価格が下がり、日本は長らくの間「貿易赤字」の時代を迎える。
同時期、世界各国はとっくに金解禁に舵をきっていたことや、日露戦争で残った国債の借り換えが限界を迎えており、通貨が不安定なままでは他国が借り換えに応じてくれない等の不安を抱きながら、浜口内閣は1930年、民衆からのバッシングを跳ね除けて金解禁を断行する。
金解禁を断行すると、政府は保有する金の量に応じた量の紙幣しか発行できず、デフレが発生する。デフレになると買い控えが起こりモノが売れなくなって不景気になり、耐えられない会社は潰れる。しかし、この当時の経済関係者は以下の様に考えている。
”デフレになる→モノの値段が下がる→各社コスト削減のため生産性向上に努める→潰れる会社も出てくるが、生き残る会社は安価で品質の良い製品を供給できるようになる→輸出好調になる”
この説を信じ、浜口内閣は民衆の反対を押し切り金解禁に踏み切ったのである。

そして始まる昭和恐慌

しかしこの時期、不運にも世界恐慌が発生してしまう。
日本は金解禁と同時に、巨額の金流出が発生。通貨量は激減、株価や物価は大暴落。
この時点での物価低下で日本製品の国際競争力が向上、輸出拡大で景気回復となるはずが、
価格が安くなっても売れない。世界中がデフレに陥り、日本市場にさらなる低価格競争をしかけるハメになる。
これに耐えかねた犬養毅内閣の蔵相高橋是清は、各国とともに1931年12月に金輸出を再禁止。
再び管理通過制度の時代に戻す。

浜口内閣と安倍内閣

つらつらと金解禁の歴史を書いてしまったが、本題に戻りたい。
民衆の反対を押し切り金解禁を断行する浜口内閣、大企業優遇措置を積極的に行う安倍内閣。
両者に共通するのは「零細企業を切り捨てる非情さ」である。
デフレに耐え、優秀な商品を生み出した一部の企業のみが経済を発展させ、GDPを高める。
環境に駆逐される中小零細は潰れてしまっても仕方がない。。このような思惑が両政府には透けて見える。
もちろん、大手企業に税制優遇を施すことで、下請けの中小企業にも仕事が回り、経済が好循環していくという論もある。しかしながら、日系大手企業は先行き不透明な景況から、どんどんと内部留保を溜め込んでいる。
手元資金が残るのは大企業のみで、中小の社員たちは淘汰されていく。
政府が果たすべき役割は「所得再分配」である。コロナの戦時下とも言うべき昨今の状況では、尚更それを痛感する。
零細企業から生まれるイノベーションを大切にしたい。5Gのような新規ビジネス発足のための税制優遇や、内部留保をベンチャー企業への投資に向ける 「オープンイノベーション税制」などは積極的に発信してもらいたいし、中小企業でもどんどん活用して活性化されてほしい。
こんな状況だからこそ人々が手と手を取り合って困難を乗り越えていく”日本一体化構想” ”世界一体化構想”が、めちゃめちゃ求められているのではないだろうか。
書いててトランプ政権の自国第一主義にも悲観的な気持ちになってきた。
何が言いたいかと言うとみんなで困難を乗り越えたい、困っている人には手を差し伸べてあげられる社会になってほしいということである。

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