書評29『ウイルスは生きている』中屋敷均

書評

人類 VS コロナウイルス。
2020年現在、この対立構図に異を唱える人はいません。
世界中の多くの人々が終息を願い、経済復興を祈り、
国境を超えた一致団結(はしてないかもですが)
を目指して日々を過ごしています。

第一次世界大戦時に起きた「スペイン風邪」にも、
2014年西アフリカで拡大した「エボラ出血熱」にも、
人々は多数の犠牲を払いながら対峙してきました。
パンデミックを防ぐべく、科学は日夜感染症対策の歩みを進めています。

その一方で2000年、『ネイチャー』誌にこんな論文が掲載されていました。

胎児を母体の中で育てるという戦略は、哺乳動物の繁栄を導いた進化上の鍵となる重要な変化であったが、それに深く関与するタンパク質が、何とウイルスに由来するものだったというのだ。

「ヒト」を形成する重要要素の1つ、タンパク質に、
「ヒト」が最も忌み嫌うウイルスを含まれているという論説です。

つまり我々の体の中にウイルスがいるから、我々は哺乳動物の「ヒト」として存在している。逆に言えば、ウイルスがいなければ、我々はヒトになっていない。

ヒトはウイルスと戦う一方で、ウイルスに生かされている。
ウイルスも宿主を撲滅してしまうと自分が死んでしまうので、
宿主となるヒトを求めている。

衝突しながらも、長い目で見るとウイルスと我々人類は
同じ時代を共に生きている仲間である、というのが著者の主張です。


文中にはウイルス研究の基礎を学べる知見が詰まっています。
しかしそれ以上に、本書を読んで
人間関係の在り方について考えさせられたという感想は飛躍しすぎでしょうか。

生きているとコミュニケーションを取りやすい人と
そうでない人というのはどうしても出てきてしまって、
苦手意識のある人にはなんとなく距離を置いてしまいます。
けれども苦手な人からの励ましでふいに落ち込んでいた心が立ち直ったり、
恐怖心を感じる人からの叱咤激励でやる気を取り戻したり、
日常生活ではとそんな場面に多々出くわします。

ウイルスのように苦手な人を忌み嫌い退けるのではなく、
面と向き合えば助けてくれることもあるかも。
ページをめくりながらそんな他者との対面方法について
考えていました(曲解だったらすみません)。


さて今日から6月です。第二波は心配ですが、一応緊急事態宣言も明けました。
New Normal / with コロナな環境での「良い生き方」を
掘り起こしていかないとです。

3.5

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