〈読んでほしい人〉
・CS向上を狙うサービス業の経営者
・競合製品との差別化に悩むマーケター
・コロナ後の世界で販売業の在り方を考える人
日本経済は成熟期を迎えています。
『FACTFULNESS』や『隷属なき道』で述べられていたように、
世界の貧困や紛争は減り、GDPは上昇し、飢饉や災害にもセーフティネットが貼られる
「豊穣の地」が生まれました。
社会が成熟すると、サービス業従事者が増加します。
本書文中には以下のような記載があります。
内閣府の発表によれば、サービス業に就く人は1970年には全就業者の 41%にすぎませんでした。それが、2010年には 68%を占めるようになりました。
サービス業従事者が増加する一方で、日本の人口は減少の一途を辿っています。
それは即ち、サービス業界での「買い手市場」の形成、ひいては
お客様の奪い合いが起きていることを意味します。
お客様確保のため、企業は製品やサービスの値下げに走りがちです。
しかし、値下げにより企業自体のプレミア感が失われてしまうことや、
元々の定価を割高に感じられてしまう現象が起こります。
結果として、企業はさらなる値下げに着手せざるを得なくならなくなります。
施策立案や現場対応で忙しく働くけれども、単価が下がっているので
期待したほどの収益は生まれない、という負のスパイラルに陥ってしまいます。
さらに、負のスパイラルの中多忙を極める従業員には、ストレスが生まれます。
従業員満足度(ES)の低下は、そのまま顧客満足度(CS)の低下に繋がります。
価格競争や類似品が溢れ、商品のコモディティ化が進む現代。
他社との差別化を図るために、お客様に求められる店舗づくりを
するには何をすれば良いのか?これが本書の主題です。
NPS(Net Promoter Score)というCSを計測する指標を用い、
CS改善のために問題点のあぶり出す方法が示されています。
面白いのは、著者が「CSの向上=ESの向上」と考えている点。
つまりeNPS(employee(従業員)Net Promoter Score)という指標を用い、
「従業員満足度を挙げるために解決すべき課題は何か」についても示すことで、
連鎖的に顧客満足度の向上を図ります。
ツールを用いた具体的な評価測定の方法が記載されており興味深いのですが、
「店舗での対面接客」の改善が主題となる一冊です。
さらに本書の初版発行は2015年。New Normalが囁かれる2020年以降では、さらに一段階上のスキル、「非対面営業」のノウハウが求められるはずです。
そしてその新しいノウハウは、未だ確立されていません。
現在の社会情勢と照らし合わせてこの手の書籍を読むと、
「今まで良しとされてきた従来型ノウハウが通用しなくなる」瞬間が迫っていることに気付きます。
プロダクトアウトからマーケットインへと販売思考の切り替えが必要が必要なように、
AIDMAからAISASへと顧客の購入モデルが変遷していくように、
ビジネスパーソンとして求められるスキルも刻一刻と変化している。
読み進めながらそんな焦燥を覚えた一冊でした。
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