書評17『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」』日経コンピュータ

書評

「経営者がITに無知だと、企業は崩壊する。」

これからのデジタル社会を生き抜く私たちに、そんな現実を
突きつけてくれる一冊です。

本書の舞台はみずほフィナンシャルグループ。
みずほの基幹システムといえば、2000年の第一勧業銀行・富士銀行・日本興業銀行の3行統合から刷新プロジェクト開始されるも、
度重なる不具合により度々話題になっていました。

昨年も連休の度にATM休止のお知らせが告知され、
SNS上でも沢山の苦言を呈されていましたが、
2019年7月にようやく完了を迎えました。

メガバンクの基幹システムを刷新することは確かに大事業ですが、
なぜ19年もの年月がかかってしまったのか?
原因と責任はどこにあるのか?

みずほに起きた悲劇の一端を知ることができます。


旧行同士の派閥争い、ハードウェアベンダーの自社利益最優先の提案、
色々と原因があるのですが、本件がここまで混乱を極めたのは
冒頭にも書いた通り経営陣のITリテラシーの低さが原因です。


例えばみずほのリテール業務を支える勘定系システムは、
システム刷新にあたって最優先に資金投入しなければならない根幹の
はずでした。

しかしプロジェクト始動当時、企業の資金調達は
間接金融(銀行からの借入)から直接金融(株式や債券発行)に移行していました。

「収益性の低下するリテール業務のシステムに、巨額の資金は
投じられない」

経営陣は利益最優先の考えに基づき判断を下します。
顧客を見ず、システムなんて動いて当然と軽んじ、自らの派閥の考えを
押し通す役員の姿勢が、後に大きな被害を生むことになりました。


2000年から始動したプロジェクトと聞くと昔話のように
感じるかもしれませんが、現代においてもみずほと同じリスクは
全ての企業が持っています。

基幹システムは勿論、昨今はサイバー攻撃に対するセキュリティ強化にも手を打たなければいけません。
しかし、日本企業はシステム周りはSIerに頼りっぱなし。
優秀なIT人材を確保しようにも、彼らは給与もブランドも格上の
外資系企業へ奪われてしまいます。


本書は「苦難を乗り越えてシステムが完成しました」と
社長の対談なんかを織り交ぜつつ美談チックに語っていますが、
本当の勝負はこれからです。

足元の市況はコロナウイルスで不透明、最大顧客のソフトバンクは
過去最大の赤字を計上し、ライバル行は人員大幅削減、さらに地銀統合と金融再編も始まっています。

みずほに限った話ではなく、日本企業はいかにして優秀なIT人材を取り囲むか、そして経営陣がどこまでITに歩み寄れるかが間違いなく今後の業績の鍵を握ります。
そして同じ市場で働く我々も、どんなITスキルを持っているか、
そしていかに周囲をまとめられる視野の広さをを持っているかで
非常に評価が変わってくるということを念頭に置きながら働かなければいけません。


文体自体は、日経コンピュータ社が過去の連載をまとめたもの
であるため、淡々と進行する感じです。
当時者の緊迫感が事細かに表現されている様子ではありません。

また前半は若干システム寄りの記載が多いため、
システム屋でない人にはとっつきにくいかもしれません。


それでも、19年・1,000社・35万人月・4,000億円という
天文学的な資源を巻き込んだ本件には、IT変革時代の真っ只中にいる
私たちは知っておくべきです。

「経営者がITに無知だと、企業は崩壊する。」
言い換えれば、「ITに強い人材を育成できた企業が勝ち残る。」です。
経営者じゃなくても、IT業界に努めていなくても、
楽観視が崩壊を巻き起こした最たる事例だと思うので
反面教師として読んで頂くことをオススメします。

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