書評12『5G 次世代移動通信企画の可能性』森川博之

書評

緊急事態宣言が延長見込みとなり、テレワーク生活ももうしばらく続きそうです。
会社ではVDIの基盤を使ってクラウドにリモート接続しているのですが、
回線が遅く接続が切れてしまうことが度々あります。

ネット上でも「これじゃ仕事にならない」との声がしばしば。
こんな時、次世代通信規格のWi-Fi 6や5Gの実用化が待ち遠しくなります。

本書はそんな5Gの可能性に焦点をあてた一冊。
5Gとは何ぞやという基礎知識から、商用化が期待される業界の実用例、
市場発展のための考察とバラエティに飛んだ内容で最新の業界動向を学ぶことが出来ます。

5G市場の主役

5Gの特徴は、「超高速」「低遅延」「多数同時接続」「上り通信の高速化」の4つ。
特に「超高速」以外は、4Gでは実現し得ない技術です。

例えば「低遅延」な回線が生まれると、自動運転や遠隔医療に応用が可能になります。
「多数同時接続」が可能になると、多人数で共用できるVR技術が生まれるかもしれません。
「上り通信の高速化」が可能になると、イベントのリアルタイム中継や工場での検品の画像認識制度を高めることが出来ます。

4G→5Gの変化で、主役は「ヒト」から「モノ」へと移ります。
ありとあらゆるモノが繋がる5G環境では、業界の構図もこれまでの変わります。
4Gの世界でサイバー市場を制したのはGAFAでした。これに加えてリアル市場の
データも収集が可能になる5Gは、全産業のプレイヤーが覇権を握る可能性があります。


可能性を探るのは我々自身

ただ、市場では未だに5Gに否定的な声も見られます。
「4Gでも同じことは実現できる」「わざわざコストをかける必要はない」
新しい技術が生まれる前は市場に受け入れられないのは当然です。
誰も市場での活用方法をイメージできていないからです。

だから、「5Gで何ができるか」ではなく、我々自身が「5Gをどう使うか」という
思考が重要になります。

新技術は、どのように市場に受け入れられるかがわからないので、
PDCAのP(計画)を立てることが出来ません。
事業を走らせながら考える必要があります。

事業者同士が共創するのもあり、顧客のニーズをひたすらに収集する新組織が生まれるのもあり、ニーズを具現化することが5G市場の覇権を握る第一歩となります。

あらゆる産業に活用できるイノベーションだからこそ、5Gの可能性は無限大です。
無限大の可能性の活用策を考察できる、ビジネス面においても非常に考えごたえのある題材です。

書評~最新動向が大変わかりやすい。著者はマーケティング好き?~

基礎知識から業界理解まで網羅的に5Gについて学ぶには最適な一冊です。
技術面に加え市場面・政治面の洞察も深いので大変理解しやすいです。

加えて、著者のマーケティング的考察が多々出てくるので興味深いです。
文中に『イノベーションのジレンマ』を思わせる内容がこれでもかと出てきて
ニヤニヤしてしまいました。笑

5Gは「4Gの延長」という意味では持続的技術ですが、
市場の構造を変えるという点では破壊的な一面も持っていると思います。
5G自体は”劣化技術”ではないので完全には”破壊的技術”には当てはまりませんが、
ニーズを誰も汲み取れていない点、使い方次第であらゆる産業に影響を与える点で
考えがいのあるビジネスです。

「5G」と一口に言っても、通信事業者の目線からユーザー端末やエッジサーバーの
メーカーからの目線、5Gの上にサービスを提供するサービス事業者の目線、
そしてお客様の目線など、切り取り方は無数にあります。

もちろん消費者として次世代通信の可能性には期待していますが、
市場への一参加者としても、いち早く協業相手を見つけてニーズ発掘に動くことで、
自分自身がイノベーションの創出者になることができる。
そんなワクワクした気持ちにさせてくれる一冊でした。

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