書評11『イノベーションのジレンマ』クレイトン・クリステンセン

書評

問答無用の名著。グロービズの書籍なんかにもよく出てくるタイトルです。
まるで自分がハーバード・ビジネス・スクールで学んだかのような読後感です。
汗を書く読書体験とはこのことでしょうか。一気読みしてしまいました。

イノベーションを興す技術とは

本書は、「市場をよく分析し、顧客の声に耳を傾け、予算達成のために全力傾注する
熱心な経営者が、なぜ失敗するのか」を主論としています。

著者曰く、企業は自らが攻略できる市場(=”バリュー・ネットワーク”、以下BN)内での利益最大化に努めることを使命としています。

彼らはBN内で顧客から求められる技術(=“持続的技術”)の発展に尽力しますが、度々市場のポジショニングに影響を及ぼしイノベーションを興すのは、BN内で必要とされなかった技術(=“破壊的技術”)です。

破壊的技術が新市場を開拓する

「破壊的技術」の特徴として、既存市場で認められている「持続的技術」の“劣化版”
であること
が挙げられます。
(例えば、ハーレーやBMW等のハイブランドオートバイに対するホンダのスーパーカブ)

上述したように、企業の経営者は自社の属するBN上で顧客に認められるべく、
製品の性能改善(=”持続的技術”の向上)に力を注ぎます。
一方で、顧客にも「最低限このくらいの性能が欲しい」という”性能の需要”があります。

度重なる技術努力により製品の性能がこの“性能の需要”を上回ると、顧客は性能差で
購買を決定しなくなります。

性能差で勝負できなくなった企業は、自社が所属するBNよりもう一段階上のBN上で
市場を展開しようとします。その市場ではより高性能が求められる分、高単価・高利益
で製品を販売することが出来ます。

こうして、あらゆる企業がどんどんと上位のBNに進出すると、下位のBNに隙間ができます。
この市場は、上位のBNと対象的に低単価・低利益です。

そのため、多くの利益を生み出す必要がある大手企業は見向きしなくなります。
ここに、新興企業にとって市場参入の余地が生まれます。

下位のBUに参入した新興企業は、上位のBUに属する企業が持つ持続的技術の“劣化版”の技術を持っています。
当然ながら、技術的に劣っているので同じ市場では顧客から見向きもされません。
そこで、この技術を使って異なる市場を見つける必要が出てきます。

ホンダがもたらす破壊的技術~オートバイから小型バイクへ~

1960年代のホンダは、日本でヒットしたオートバイ市場をグローバル展開させようと
北米に乗り込みました。しかし北米では既にハーレーダビッドソン・BMWという市場の覇者が存在し、ホンダのオートバイは全くシェアを獲得できませんでした。

絶望にくれていた営業担当者が気晴らしにスーパーカブ(ホンダの小型バイク)でツーリングに出掛けると、その姿を見かけた市民から意外な反響を受けました。

当時アメリカには”小型バイク市場”は存在しなかったにも関わらず、ディーラーのもとに「あのバイクが欲しい」と問い合わせが殺到。
高価格帯のオートバイの”劣化版”であったスーパーカブは北米で大ヒットしました。

このホンダのスーパーカブに見られるように、破壊的技術の特徴の1つ目は誰もが予測していなかった市場を作り上げることです。
当時北米に存在しなかった小型バイク市場が、ひょんなことから大ブームをもたらしました。
しかし、このブームを事前に予測できていた人は誰もいません。
大手企業は事前に利益計画を立てられる持続的技術に投資する傾向があるため、
新たなイノベーションを生み出す破壊的技術に投資できないことが多いです。

そして破壊的技術の2つ目は、技術はどんどんと進化していくということです。
ひとたび新興企業が破壊的技術でブームを生み出せば、彼らはその技術を改良し進化
させようとします。

前述したように顧客には求める”性能の需要”のラインがあるため、
この需要ラインを超えるまで進化した破壊的技術は上位のBN市場に参入する事ができます。

また破壊的技術は持続的技術に比べて安価な傾向にあるため、
上位のBN市場に参入した破壊的技術がそのまま市場を席巻することも有り得ます。

大手企業が見向きもしなかった技術が、下位市場で新たなニーズを発見しブームとなり、進化を重ねていく中で上位市場を食い荒らす存在になる。
企業の盛者必衰は、このような原理で作用しています。

解決の難しい”イノベーションのジレンマ”

この原理が解決できないのは、「優秀な経営者ほどこの原理にハマる」からです。
優秀な大企業の経営者は、自社の利益最大化を第一に考え、あの手この手で利益の取れる市場参入に注力します。当然、低利益・小規模の市場へは投資しません。

これが経営者としてあるべき姿であり、非の打ち所がない姿勢なのですが、
悲しいことにイノベーションは低利益・小規模の市場から生まれるのです。

イノベーションの獲得を目指して全てのリソースをこの市場に注ぎ込む新興企業に、
小規模市場には投資しない、もしくは片手間で参入する大企業が勝てるはずがありません。

大企業の破壊的技術への対抗法

大きな対抗法は2つ。①買収によって下位市場へ参入する能力を得ること
②社内で下位市場への参入を使命とする独立した別組織を作り出すこと
 です。

①と②どちらにも共通して言えることですが、組織は共通の価値基準に則って行動できなければ失敗します。

全社方針で高単価市場への注力が求められているのに、一部門だけ方針と異なる活動を
させても、メンバーの同意は得られず、組織からの期待も明確にならずで、競合に太刀打ちすることはできません。

大企業がこの破壊的なイノベーションに対抗するには、破壊的イノベーションへの対抗を使命とする組織を生み出す」ことが必要です。

破壊的技術がどのニーズと合致するかは、やってみなければ誰もわかりません。
だからこそ企業がイノベーションを生み出すには、市場のニーズが生まれる瞬間を敏感に汲み取り、いち早くパイオニアとして市場に参入することが求められますし、
そうするための体制を構築しておくことが必要不可欠です。

所感~とにかく面白い。読めば読むほど味が出る~

一部分だけ抜粋して記載していますが、ビジネスの盛者必衰の要因がこんなにも明確に
理解できるという点において間違いなく良著
です。読後は軽い興奮を覚えます笑。

破壊的技術がまだ市場から認識されていないニーズと結びついたときイノベーションが生まれるというのが本書の主題ですが、コロナ問題で「ニューノーマル」な働き方が囁かれる今、確実に新しい顧客ニーズが生まれ、新規のイノベーションが創出されまくっていることを肌で感じます。

コロナは一刻も早く終息してほしいですが、世界が平和になった後、どの企業が覇権を握るのかは今までと全く変わってくると思いますし、大注目です。

一方で本書は経営者向け、投資家向けの一冊であることは間違いないですが、
実務ベースでもこの「ニューノーマル」の影響で市場に変化が見られている今、
既存の技術で破壊的イノベーションが興せる可能性が高まっていることにはしっかりと
注視して働きたいなと思います。

市場の動き方がこの一冊でかなり鮮明に理解できるようになります。
GWにガッツリ読みできて良かった!

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